アレンは夜の道をひとりで歩いていた。月明かりがやわらかく辺りを照らしていた。数日前までは、
こんな道は一人で歩いたことはなかった。いつもマナが手をつないでくれていたから。
アレンはふわふわとした歩き方で、光の無いほうへ進んだ。そこにマナがいるような気がした。
自分の立てるもの以外には何の音もしない。風の無い夜だった。
前にもこんな夜があった、とアレンは思う。今夜だけではない。マナがいなくなってからというもの、
見るものすべて、触れるものすべてがマナを思い出させた。ほんのちいさなものも。ろうそくの明か
りも、かすかに揺れる緑の草も、マナと一緒に見たものだった。
その時、枯れた枝をかき分ける音がした。アレンは首を傾げる。狐だろうか、兎だろうか。それとも、
「マナ…?」
音のするほうに駆け寄ると、そこには数人の背の高い青年がいた。
(マナより背が高い)
そうぼんやりと思ううちに視界が反転した。青年の一人の肩に担がれたらしい。
「こんな時間にガキが何してんだ?」
「かまってほしいのか?」
声が聞こえる。意味はわからない。まるで夢の中のようだった。けれど不意に、アレンの服に手をか
ける感触が生々しく浮かび上がった。上着のボタンの飛ぶ音。布の裂ける音。肌に触れる不愉快な指。
「いや…! やめて!」
アレンは泣き叫んだ。マナがいなくなってしまってから水も飲んでいないから声がかれてしまって出
ない。夢中で青年たちの顔や手をひっかき、かみ付いてどうにかして逃げようとする。快適な場所か
ら不意に引き摺り下ろされたような心地がした。アレンは今まで空を飛んでいたのかもしれない。

もうマナはいない。もう誰もアレンを本当に助けてくれることはない。

帰り道、アレンは空を見上げた。月のせいでほとんど見えなくなっていたが、無数の星がまたたいて
いるのがわかった。
足を引きずり、今にも倒れそうになりながら、灯りの消えた家を目指す。
アレンは家にたどり着くと、そのままぐったりとベッドに沈み込み、
「おやすみなさい、マナ」
いつも隣にいたマナにそうささやいてすぐに眠りに落ちた。







マナの死を認めて生きていくアレン。 ってのが書きたかったんですよ。でもなぜかショタみたいのんに…。瀬名ショタ好きじゃないのに…