悔恨 「今年はよく降りますね」 吐く息が白い。雪よりも白い。隣に佇む男の肌より白い。 「ああ。特に今日は、冷え込む」 「風邪を召されないよう、お体にはお気をつけ下さい」 「平気さ。お前は心配性だな」 なるべく隣を見ないですむよう、俯きながら、黒い皮手袋の指を組む。 その髪の一筋でも、目に入ろうものなら、何もかもが終わってしまう。 そんな気さえしていた。 男の体温も聞こえてきそうだ。それほどに静かな夜だった。ただ雪だ けがしんしんとつもる。 白い。世界が白い。何もかも、見失ってしまいそうだ。闇に融けた景 色があまりに不安定で、思わず、行かないでくれと呟いた。 「お前がいてくれるから、私も安心していられるのだよ」 男がにっこりと笑った。客に対するとき、いつも浮かべているあの笑 みとは、どこか違う、どこか悲しげな表情だ。 「私はどこへもいきませんよ。ここは私の、家のようなところですか ら」 彼はアスファルトに視線を戻す。 「どこにも行かないでくれ、これからは、ずっとここに…」 それ以上、御託を並べる勇気はなかった。彼は歯を食いしばって、呻 くように声を漏らした。 「すまなかった」 男が生きていた時には、ただそれだけ、それだけの言葉を吐き出すこ とさえ出来なかった。 ただ、自分の作り出した幻に向かってのみ、言うことが出来る。 面を上げると、幻は、やはり悲しげな目をして、そこにいた。 「恐らく、今は少し、弱気になられているだけなのでしょう。心配な さらないで下さい、ヨツバは立ち直ります」 幻にまで救いを求めなければならないとは。 彼はそう苦笑した。 しかし、もし男が生きてここにいたら、そんなように言っただろうこ とは容易に想像がついた。 「奈南川。お前には、全てを負わせてしまった」 そう、何もかも。彼ならば受け止めてくれるのではないか、などとい う、無責任な期待をもって。 幻は溶けてしまってもう見えない。雪が、一寸先をも白く煙らせるほ どつよくなっていた。 一体、今まで何をしてきたのだろうか。 振り返ってふと、自らの築いたビルが巨大な、ひどく恐ろしいものに 見えて、四葉台之介はまた一つ白い息を漏らした。

うっわ〜、きっも〜い☆ なんか台さん受けっぽくてきも〜い ゴメンナサイ。でも台之介×奈南川は書きたいとは思ってたんです。 奈南川って社長ラブ!じゃないですか。 もー社長がいないと生きていけないというか、ようするにほら、あの ダンスネと一緒ですよ(ごめんなさい思わずほかのジャンルと 混合してしまった)