Christmas
この時期になると、街全部が音楽と、浮ついた空気で満たされる。時々ぱらぱらと
降ってくる純白の雪までも、無数のイルミネーションに染められて七色に光ってい
るようだった。その由来もよく知らないのに、どうしてこれほど盛り上がれるのか、
奈南川にはそれが不思議だった。
「クリスマス、か」
口をついて出たのは、まるで事務的な、興味のない声だった。
「え、奈南川、知ってたのか」
三堂が驚いたように振り返る。
「さすがに、な。これでも営業の人間だ」
言って顔をしかめると、三堂が急に笑顔になった。
「それなら話が早い」
「は。何が?」
今度の日曜、休みを取れないか、と。
「…偶然だが、空いているようだ」
手帳を確認して奈南川は僅かに目を見開いた。ここのところ仕事が詰めに入って、
とても休みなど取れる状況ではなかったのだが。視線を上げると三堂がやはり笑っ
ていて、君のところの女の子は上司思いだ、などと言う。
「二人で出掛けよう。決まりだ」
それだけ言って帰ろうとする三堂を引き止めて、
「何で、」
三堂はまた笑った。こいつはこんなに意味もなく笑うようなやつだっただろうか?
「だって日曜はクリスマス・イブだろう?」
そして、知ってたのじゃなかったのか、などと言って、やはり笑いながら帰ってい
った。
クリスマスだから、などと言って、自分までもが浮かれるはめになるとは思わなか
った。
けれどその日の、家までの道はやけに気持ちがよくて。
ただ浮かれるだけのクリスマスも、悪くないかもしれない。
奈南川は一人そんなことを考えた。
KIKIさんお誕生日おめでとうございます!
もーめちゃめちゃ遅くなってしまってごめんなさい;;
自分から書きたいとかゆってたくせに…
こんなんですが献上いたします 笑 よかったらもらってやってください〜〜(弱気)