鍵が掛けられていたわけではない、扉は広く開放されていた。 あの向こうにはおそらく、ポッターやブラックや、およそ闇と交わることの無い光たちが自由に駆けているのだろう。 スネイプは暫く扉を眺めていた。外にはまぶしい光が溢れてはいたが、彼の足元まで届き、血色の悪い顔を照らすほ どまではいって来ることはなかった。 所詮、それだけの光。それだけの力しか持ってはいない。 ふと、頭上に気配を感じて立ち止まった。スネイプの口がゆっくりと動く。 「ダーク・ロード……」 膝を突いて項垂れる。 目隠しでもされたようだ、濃い闇の中には何も見えない。 これこそが自分の望んでいたものかもしれなかった。色彩の無い、ただ全てが平等で、無表情な世界。 知覚などいっそ無ければいいのだ。それのために異常とみなされるものが生まれるのならば。 「久しぶりだな、スネイプ。まだここにいたとは思ってもみなかった」 彼の声はひどく傲慢に、従うものとそうでないものを嘲笑う。 無邪気な子供のままの調子の、けれどしわがれた老人のそれのような響き。 「別に僕は、拘束しているわけではないのに。ああ、それとも」 全てを見透かしたように、そして それとも、お前自身がここにいることを望んでいるのか。 白々しい台詞は優しく向けられた憐憫のように冷たかった。笑い声さえ冷たい。 「皆が望んでいなかったら、ヴォルデモートなんて存在しなかっただろうね」 そう、望んだ人間がいたからこそ。 自分もその一人だということなど、嫌というほど承知していた。 蝋燭の灯りが消える。 「本当は僕は、ただのトム・リドルなんだ。ダーク・ロードなんてどこにもいないんだよ」 「閣下」 スネイプはやわらかく言った。苦笑しつつ、そっと顔を上げる。 そこには勿論帝王の姿などない。ただ果ての無い闇と、目障りな光が少しあるだけだ。 「私はあなたに仕えます。たとえこの身の滅ぶとも」 彼から逃げることは出来ない。 これは自分で選んだ道なのだから。 靴音が高く響く。自分の存在を空間に誇示するように、扉を勢いよく閉めた。 もうこれ以上、一筋の光さえも入ってくることはない。

なんか、光に憧れつつどうしようもないような感じのセブが書きたかった。 これもまた短いですね〜。そしてまた訳の分からん話だ(汗)。 よっぽど扉っていうのが好きなんだろう、これ書いた人。あまりにもワンパターン…! いいかげん脱出したいです。我慢して読んで下さってる方も愛想つかしますよ。飽きるし。 コンテンツこんなに少ないのに。