願い、が、









「いなくなった方がよかったんだ、あんな奴」
セブルス・スネイプは苛々と呟きながら、新しいボトルに手を伸ばした。既にいくつもの
瓶が、テーブルに、床に、散乱していた。普段はあまり飲むほうではなかった。むしろそ
うして酒に溺れる連中を冷ややかな目で見ているような人間だった。

「私はむしろ安堵したよ」
そう言って鼻で笑おうとした。
「これ以上あんな奴のせいで苦しまずにすむ」
それなのに息がつまる。鉛が胸につかえたように苦しくなる。それを悟られまいと、再び
グラスを口にやる。不意にグラスが傾いて、琥珀色の液体が飛び散り、それからガラスが
砕ける音がした。ああ、指の力が抜けたのか。冷静にそんなことを思って、ようやく自分
が酔っていることに気がついた。
リーマスが慌てて杖を取り出すのが目の端に写る。セブルスは杖の先を指で弾いた。
「置いておいてくれ…。私が片付ける、から」
落ちた拍子に他のグラスも割れたのだろうか。一つのグラスにしては破片の数が多いよう
だった。ふと指先に熱を感じる。きらきらと光る破片に混ざって赤いものが流れた。それ
を見て何故か憤りを感じた。
「何故私が…、あいつでなくて私が、…」
大きなガラスの一片が目に留まった。セブルスはそれをしばらく指でもてあそんだ後、大
きさを確かめるように握った。じわり、と血がにじむ。力を強くすると腕を伝ってテーブ
ルが少しずつ染まった。
不意に手首をリーマスが掴んだ。
「離せ…」
息が荒くなる。体が傾ぐ。倒れまいと思って唇を噛んだ。顔を上げるとリーマスが心配そ
うに眉を寄せていた。
「セブルス? 泣いてるよ」

頬には涙が流れていたらしかった。
「なるほど。それでいくら飲んでも飲み足りなかったんだな」

どうして今頃になって、こんなにも涙がでるのか。
(苦しい)
そうだ、苦しい。苦しいのは、シリウスがいるせいだと思っていた。あいつさえいなくな
れば解放されるのだと思っていた。それなのに。

床に、崩れるように蹲る。
セブルスと、何度も呼びかける声が遠くに聞こえる。
この手で殺すのだと、幾度も誓った。
「待っていると、いったのに」
お前はまた嘘をつくんだ。

どこまで行っても、私はお前のいるところに辿り着けない。



……永遠に?









叶うかもしれない、そんな風に虚しく自分を慰めて、目の前にまだ遠く続く道をのぞんで
荒い息を吐く。









ああ、どうか、この道がはやく途切れますように。












シリウス追悼、みたいな。今更…(2006年10月ですからね)(もう2ねんたってるよ)
セブにとって、シリウスの存在はそうとう大きかったと思います。や、原作でもそうです
し? うふふ。だってそんなに殺したかったんですよ? あんなエロいせりふ吐いちゃう
くらいなんですよ?? (おぞましい死刑も最後まで瞬きせずに見届けてやるみたいな。
おおお覚えてない 死)
それから、シリウスが死んだときにセブルスのそばにいるのはリーマスであってほしい。
セブと痛みを分け合えるのは彼でなくては駄目です。きっと。
えーと、願いっていうのはきっと、その、シリウスのいるとこまで行きたいっていうか、
理解しあいたいっていうかそんなかんじでいいんじゃない(え

それはそうと、この画像、懐かしい…。
サイト開設時のトップに使わせていただいていたのでした。